「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」
この本はタイトルを思い浮かべるだけで目に涙が浮かびます。
古い本で、出版されたのはもう30年以上も前になります。その当時はとても話題になったらしく、映画やテレビドラマにもなりました。
著者の井村和清氏がこの本を書こうと決めたのは、自分の足に悪性腫瘍である骨肉腫を発見したときでした。
外科医として、何度も同じ病の患者を診察してきたため、レントゲン写真に映った影を見た瞬間、ご自身の余命が残り僅かだと分かったのです。
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この本には、妻とひとりの娘、そして自分の手で抱くことの出来ない「まだ見ぬ子」に、父親としてのメッセージを残したい。そんな強烈な思いが一頁、一頁に綴られています。
私がこの本を手にしたのは、小学校の高学年の頃だったと思います。家の本棚からふと取り出したこの本を読みながら、目から熱い涙がポロポロと溢れたのを覚えています。
色々なものが自分と、自分の父親に重なって見えてしまったのでしょう。
■父の死
父は私が六歳の時、肝臓がんでこの世を去りました。助かる見込みが無いと診断されたにもかかわらず、本人や母への告知もないまま、たった数ヶ月の闘病生活を終えたのです。
残っている手帳のメモには、投薬や食事の記録が残っていました。
明らかに硬くなっていく右脇腹から、自分の病が重篤なことは気づいていたようですが、もうダメかもと感じた時には、常に襲いかかる激しい痛みに耐えるだけで精一杯だったようです。
母に至っては、今日の容体が一番悪く、明日からは快方に向かうと信じ続けてたため、病院からの訃報を理解出来なかったと聞いています。
父の死について覚悟が出来ていたのは、医師から告知を受けていた実の兄、私の伯父だけだったのでしょう。
もし、本人と母にきちんと告知がされていたら、今はもう聞くことが出来ない父の物語が残されていたのかもしれません。
■自分の余命がどれ程残っているのか?
それを明確に知っているのは、死に至る病を告知されている人だけかもしれません。
平均的な日本人男性の寿命を考えると、私もあと40年は生きられる予定ですが、それはあくまでも一般論にすぎません。
先日、東日本大震災の復興支援業務で岩手県のある町へ出張してきたのですが、津波により破壊された市街地を目の当たりにし、その荒涼とした風景に衝撃を受けると共に、亡くなった方々がその前日までは、平凡な日常を送っていた事について、改めて考えさせられました。
その平凡な一日は、いま私達が過ごしている今日と同じなのですよね。
もしかすると、明日を迎えることが出来ないかもという現実に、どれだけ覚悟が出来ているでしょうか。
数年前ですが、その覚悟を迫られた事がありました。
皮膚科で出血を伴うホクロを除去したのですが、病理診断の結果、それが悪性腫瘍と分かったのです。
上皮細胞基底腫という、危険度の低いものだったのですが、それが黒腫という種類のものだったら、今こうして此処に居られなかったかもしれません。
私の親族は、肝臓癌で亡くなった父の他にも、母方の祖父、伯父、そして兄弟のようにして育った従兄弟二人が癌で亡くなっています。
そんな家系のため、病院の診察室で診断結果を聞いた時「俺の番か」と妙に醒めた頭で呟いたのを覚えています。
あれから数年が経ち、幸い再発も転移もなく現在に至ります。
そんな経験があるため、子供と一緒に成長し、これから沢山の季節を一緒に過ごしたい、という気持ちはもちろんありますが、「万が一の事があったら」という気持ちも拭い去れません。
我が子に贈るEvernote – このまま一生β版
以前、このような記事を書いたのも、その気持ちの現れでした。
■今、本を書こうとしています。
仮にタイトルを付けるとするなら「我が子に贈るライフハック」という所でしょうか。
冒頭で紹介した井村氏の様に、自分の余命が残り僅かだとしたら何を伝えるか?
もし、そのような状況に置かれたとすれば、そこに書くのは、枝葉のツールやテクニックではなく、自分がこれまでの人生で経験した成功と沢山の失敗から学んだ本当に大切なことに絞られるでしょう。
その内容は私が歳を重ねる毎に加筆され、失敗する度削除されるため、完成という形にはなりません。私が死ぬまでは、ずっとβ版です。
何年後になるかわかりませんが、Evernoteの数万近いノートから見つけ出され、半分はバカにされながら読まれる所を想像しつつ、子供のために、そしてそれと同じくらい自分のために書いてみたいと思います。
電子書籍「あのプロジェクトチームはなぜ、いつも早く帰れるのか?」を発刊させて頂きました。執筆する際、最も力を入れた箇所、想いについてはこちら
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