第二の脳は第一の脳を損なうか?
DEMICOUPER CUT OFF MEMO via photopin (license)
「第二の脳 」 と呼ばれるEvernoteは、私達の記憶の保管庫として仕事・プライベートの両方で無くてはならないツールとなりました。
Evernoteのおかげで、細々とした雑多なことを覚えておかなくてすむようになった反面、自分の頭で覚えようとする努力が明らかに少なくなったと感じます。
第二の脳、補助脳として、第一の脳のサポートをするEvernoteが、その第一の脳の機能を減退させる原因となっては本末転倒です。
今回はEvernoteを使うことが人の脳にとって良い効果をもたらすのか、それとも逆に記憶力を損なわせる原因となるのか。その辺りについて考えてみたいと思います。
メモが記憶力を損なう
検討のたたき台として、こちらの記事を紹介しましょう。
メモを取っても記憶は定着しない:研究結果 « WIRED.jp
こちらの記事で書かれている実験では、被験者となる学生を2つのグループに分けて神経衰弱のゲームをさせました。
その条件とは、一方のグループではカードの内容・位置をメモすることが許され、もう一方のグループではメモを取ることは許されないという内容です。
ゲーム開始後一定時間が過ぎた時点で、メモありグループからはメモが没収され、その後、メモありグループとメモなしグループとで、どちらのほうがよりカードの位置を記憶しているかを検証したものです。
当然のことながら、メモ有りグループはメモ無しグループと比べ、カードの位置を正確に記憶することが出来なかった。
この記事ではその結果を踏まえ、メモを取ることが人間の記憶を定着させるのに逆効果であると結んでます。
失われるのは覚えようとする努力
このメモと記憶力についての実験に対する考察は表面的で、もう少し掘り下げる必要があります。
そもそも私たちがEvernoteを含め、いろいろな事をメモするのは、覚えるためでなく安心して忘れるためでもあるからです。
書籍、「ストレスフリーの整理術 」で紹介されているGTDでは、記憶を自分の脳に頼らず、紙に書き出すことで気になることを頭の外に出すようにと書かれています。
それは「何かを記憶し覚えておく」 という行為が、有限である脳の認知リソースを消費するからであり、その限りある脳のリソースを、細々としたやるべき事や気になる事を覚えておくことではなく、もっと大切な「目の前の問題について考えて答えを出す 」という脳の別の機能へ割り当てる必要があるからです。
紹介した記事の実験をもう少し納得のいくものにするためには、その実験の項目をもう少し増やさなければなりません。
例えばこのようなケースです
・ケース1
実験の前半では、メモ有りグループとメモ無しグループの2グループで神経衰弱をプレイさせ、後半では両グループとも同じメモなしの条件でプレイをしてもらう。
実験の評価として、自分の記憶力のみを使ってプレイしたグループと、メモを活用することで脳の認知リソース消費を抑えられたグループのどちら方が後半の実験でよい成績を出すことが出来るかを検証する。
・ケース2
メモ有りグループとメモなしグループとで、一週間ほど神経衰弱や記憶力が必要となるゲームをプレイしてもらい、実験の最終日に同じメモなしの条件で神経衰弱をプレイをしてもらい、どちらのグループのほうが良い成績を出せるかを検証する。
予想される結果
ケース1の実験では
メモ無しグループはカードの位置を覚ることに認知リソースが消費されてしまうため、実験の後半では脳が疲れてしまい、正確に覚えることが困難になると予想されます。
逆に、メモ有りグループは自分の頭でカードの位置を覚えなくて済むので、脳の認知リソース消費を抑えることが出来ます。
よって、ゲームの後半に入ってもフレッシュな頭でプレイをすることが出来るため、その結果、メモなしグループより良い成績を出せると考えられます。
ケース2の実験では
メモ無しグループの方が良い成績をとるでしょう。
なぜならメモ無しグループは、プレイの際に自分の頭で記憶するという努力を続ることで、脳の記憶に関する能力が向上すているはずだからです。
人の脳は使うことで活性化し、記憶を司る脳の部位はそれぶんだけ発達します。
その結果が一週間程度の実験で現れるかどうかは分かりませんが、理屈上はそうなるはずです。
メモと脳の使い方にはバランスが必要
現代のビジネスパーソンは、朝から夜までひっきり無しに飛び込んでくるメールの確認や、電話対応、同僚・部下・上司からの様々な依頼などに対応しなければなりません。
それらの容赦なく飛び込んでくるタスクは、ただ読めばいい、話を聞けばいいというわけではなく、それに対して何らかのアクションが求められます。
求められるその全てのアクション(追加されたタスク)を自分の頭だけで覚えておこうとする人は居ないですよね。
もし自分の記憶力だけに頼ってその全てを覚えておこうとすると、必ずどこかで抜けが生じ、痛い目に遭うことが分かっているからです。
最低でも手元のメモ用紙に相手の用件や、それに対して自分が行うべき具体的な行動をメモし、後で見返し思い出せるようにしている筈です。
日常的に情報の洪水にさらられている私達の脳は、すでにオーバーフロー状態にあるため、日常の雑多な細々したことは、出来るだけ外部の記憶領域に覚えさせ、自分の好きなタイミングで思い出せるようにしておく必要があるのです。
この記事の冒頭に戻りますが、そのツールとして最適なのがEvernoteだと思うのですね。
今回の記事では、短期記憶を外部に保存することで脳のリソース消費を抑えることについて書きました。
次の記事では、Evernoteを使い、Evernoteに保存した情報を自分の長期記憶として刻みつける方法について紹介したいと思います。
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