クラウドの本質はファイルがまとっている殻を取り除くことです。
ここで言うファイルと言うのは、人の考え、アイデア、仕事で作成した資料、撮影した写真など、人がアウトプットした創作物をデータ化し、PCで閲覧できるデータにしたものとしましょう。
最初に書いたファイルの殻という喩えですが、簡単な表現をするなら、そのファイルが人から人、デバイスからデバイスへの移動、またそのファイルの編集の容易の事を指します。
その殻の硬さが、そのファイルの保存されている状態により変わるとするならば、以下の具体的な保存状態の例で言えば下に行けば行くほど柔らかくなります。
1.ネットワークに接続されていないPCに保存されている
そのPCを操作出来る人しかそのファイルにアクセス出来ない。そこにどんな良いアイデアや成果が保存されていたとしても、そのファイルへアクセス出来る人は少数に限られています。
2.LANで繋がっているPCに保存されている
フォルダーの共有設定が出来ていれば、他のユーザーもそのファイルにアクセス出来ます。この状態で初めてそのファイルが他者との共有が可能となり、作成者以外の人がファイルの移動、編集が出来るようになります。
3.共有のファイルサーバーに保存されている
もう少し共有が進んだ状態で、ネットワークに接続しているPCで、サーバーへのアクセス権限が与えられていれば、誰でも自由にファイルへのアクセスが出来ます。
しかし、ファイルが共有されているとはいえ、そのファイルにアクセス出来るのは、ファイルの作成者が属する組織のメンバーだけでしょう。
4.ファイルがネットにアップロードされ、そのURLが公開されている
この状態で初めてファイルへのアクセス出来る人が不特定多数となります。ネットに接続出来る環境で、URLさえ知っていれば誰でもこのファイルにアクセス出来ます。ファイルが纏っていた殻が殆ど外れたと言えるでしょう。
5.ファイルがgoogleドキュメント形式で保存されている
ファイルの形式は限定されますが、この状態になってはじめて、ファイルの殻が全て外れたと言えます。Googleドキュメントのファイル共有機能を使ったことのある方ならご存知かもしれませんが、Googleドキュメントの文書機能、スプレッドシート機能は、URLを知っている人が自由にアクセス出来るのと同時に、編集権限が与えられている人は、そのファイルを直接編集出来ます。それも、他の人が閲覧している文書を同時に開き、同じファイルに対して同時に編集を行うことが出来ます。
これが、ファイルがクラウド化され、纏っている殻が完全に取り除かれた状態です。この状態になることで、クラウドの技術が最も活用出来る可能性が出てきます。
これについては、Googleドキュメントで作った具体的なファイルを見ながら説明してみましょう。
例として挙げるのは、このページ「為替データ」です。クリックするとGoogleのスプレッドシートにジャンプします。
■Googleドキュメントのファイルには殻が無い
キャプチャーしている画面は、2011年2月15日と少し古いですが、その日の為替値が表示されています。
2月15日は1ドルが83円だったんですね、この時点でドルが70円代になるなんて誰が想像したでしょう。。
これは、Google の通貨換算機能を活用したもので、検索欄に「1usd to jpy」と入力することで、現在のドルに対する円の値段を検索結果として表示する機能です。同じ要領で他の通貨の換算も可能です。
この為替換算機能を取り込む具体的な方法ですが、このシートの別タブで、各通貨に対する円の値段をスプレッドシートに取り込む関数を組み込んでいます。
以下の画像がそれですね。左から、USドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、ユーロの値段を取り込んでいるのが分かります。
グーグルの検索結果をスプレッドシートに取り込むのは、B3セルに入力された以下の関数。この関数を使って検索結果をスプレッドシートに取り込んでいます。
これにより、B4セル内にGoogleの検索結果が表示されます。最終的に使用する為替値は、B2セルに入力された関数で数字のデータのみを抽出させます。
このようにして、別タブで取得したデータを整理したものが、最初に表示させたページということです。
まだまだこのような機能が実装されているサービスは限定されていますが、ファイルがクラウド化されその殻がなくなることにより、ファイルの公開範囲が広がるだけでなく、その編集も複数の人が同時に行え、またそこへ入力されるデータも自動的に取得出来たりと、その可能性は大きく広がります。
非クラウド状態のファイル編集が、一人一人が自分のノートに絵を書いているとするならば、クラウド化されたファイルの編集は、大きな壁画をみんなで書いているようなものでしょう。
そこには、沢山の人の手を借りることによる生産性の向上だけでなく、その共同作業を通して集まる智恵により、まったく新しいアイデアが生まれるような可能性もあると思うのです。
電子書籍「あのプロジェクトチームはなぜ、いつも早く帰れるのか?」を発刊させて頂きました。執筆する際、最も力を入れた箇所、想いについてはこちら
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